バグ

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 このシステムは、母が子どもの頃から運用されているらしい。  私には、この世界の常識がない世界なんてこわくて生きることが出来ない。  本を読むことは、文字に触れることは、何歳になっても人として生きるためには必要なことらしい。だから、毎朝システムが選んでくれた本を読むのが義務となっている。  このシステムが運用される前から、子どもが生まれた時に絵本がプレゼントされることはあったらしい。ただ、そのときはランダムで好みとずれていることも少なくなかった。好みに合わないから、読まれないことも少なくなく意味を果たしていなかったと教えられている。  しかし、それは仕方ないことだった。あの頃は、ある程度成長しないと何に興味を持つのか知ることが出来なかった。今は、出生前診断でその子の容姿から趣味嗜好までの特徴すべて把握することができるらしい。だから、無駄がなくて効率的ですばらしい世界になったと思う。  人間の命には、限りがあるから、迷ったり、間違えたりしている暇はない。人間は、失敗をする存在だから、機械の補助がなしには生きていけないらしい。そうずっと教わってきたし、それは、当たり前のことだった。  そんなことを言っても、私はこの世界についてなにも知らない。  なにが起きているのかもよくわからない。  それでも、この安全で安心な日常があるなら、考えても仕方ない。  この世界は複雑すぎて、きっと私が理解することは、出来ない。そう教えられてきた。  私は、バグみたいな存在らしい。そんなことをよく教わる。それは、家族は皆、優秀なのに私だけ違っているから。
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