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私は、印刷された本しか読んだことがない。けれど、この世界の本は、すべて電子情報として保存されているらしい。それは、本だけじゃない。この世界のすべては、電子化されているらしい。
ただ、安定的に利用するために、電子情報にアクセスできるのは、限られた人間だけらしい。昔は、誰も利用できていたからこそ、回線が込んでしまったり、サーバーが落ちてしまうなどのトラブルも多かったらしい。それは、この世界にとっては致命的なことらしい。
だから、私みたいに、適性なしとされた人間は、電子化された情報に触れることが出来ない。その判断は何を持って決められているのか分からない。ただくじで決められているんじゃないかっていう人もいる。
選ばれなくても、教えて貰ったり、私のことを分析してくれたり、システムは決してないがしろにしているわけではない。それでも、少しだけそれが寂しかったりする。
小さい頃は、両親のように触れてみたいと思っていた。どんなことが起きているのか、知りたかった。
そんなことを思っていたからか、私には一冊の本が差し出された。
その本には、世界の複雑性について書かれていた。興味深い内容のはずなのに、その中身を理解することが出来なかった。まるで、記号の羅列のようだった。
この時、知った。私は、指示された通りに動くしかないのだということを、痛感させられた。
選ばれなかった私は、システムに逆らってはいけない。
そんなことがわかっているのに、隣が気になって仕方ない。
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