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私は壁を軽く叩いた。
その時、隣の人も叩いていた。
私たちは壁の隙間から目を合わせた。
そして、その隙間から本を交換した。
これはいけないこと。システムに逆らってしまった。
けれど、アラームは流れない。
それが不思議だった。
共犯として意識なのか。私たちには、確かな仲間意識が生まれた。
たった一回のやり取りなのに、忘れられなかった。
普通に生きて指示された仕事をこなす毎日。合理的だけど、退屈な日常。
それでも、本を読みに行く時間が楽しみだ。あなたと会うことができたり、顔を見ることができたりするだけで、刺激的な日々になると思う。
あれから、何度通っても、隣の人と本が間違えられたこともない。それに、彼と会うこともない。
本当に一回だけ。
それでも、あのとき彼から渡された本のように私たちは結ばれる運命にあるのだろうか。
その答えは、きっと明日になればわかる。
マッチング相手、あなたがいいな。
もしそうなら、あれは、バグなんかじゃなくて、あれこそが私にとって運命の一冊になる。
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