Forever

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 天使見習いは、人間界の義務教育期間を終えてやっと天使として認められ仕事が与えられる。  大天使様が人間の記憶を弄り、私はある夫婦の娘となった。  その後は幼稚園、小学校と通い、残るは中学の三年間。  この期間中は、時間の流れも人と同じになっているためここまでがすごく長いもののように感じるが、それもあと三年。 「幼稚園からずっと一緒って、私達運命の赤い糸で結ばれてたりして」 「そうかもしれないわね」  笑みを浮かべ答えるけれど、間違っていないから冗談で頷いたわけではない。  期間終了までの間、一人の人間が天使見習いのペアとなる。  私のお相手は、(あきら)。  幼稚園の頃から一緒の女の子で、私が期間中に観察する対象。  義務教育期間でも人間と天使では違う。  天使は、人間界を知り人を助けることを目的としている。  他にも、観察対象を常に見張りどんな人間なのかを見極めることがもっとも重要。  中学を卒業した天使見習いは天界へと戻り、ペアとなった人間がどんな人物かを報告する。  それに合格できれば晴れて天使として認められる。  義務教育期間でも自身の行い。  ペアとなった人間の見極め。  どちらも出来なければ天使として認められることはない。 「次の授業なんだっけ?」 「数学よ」  晶は何も知らない。  あと三年で私に関する全ての記憶が消えてしまうことも。  人間に情が湧くことは、天使としていいことであり悪いことでもある。  天使となったとき、情が邪魔をして正確な判断が出来なくなるから。  私は晶に情があっても、それで判断を鈍らせることはしない。  私が見てきた貴女は、いつも他人の事を気にかけていた。  困った人を見て見ぬふりなどできないお手本のような善人。  ——三年後。  天界へと戻った私は大天使様への挨拶をする。  十五年以上経った今でも、その神々しさが変わることはない。 「ご苦労でしたね。人間界での貴女の善行は見ていましたよ」  微笑む大天使様は続けて私に問う。  お相手の人間がどうであったか。  善人か悪人か。  これは最後の試験。  私は自身が見てきた晶のことを大天使様に報告する。  誰にでも優しく手を差し伸べる、まさに善人の様な人間であったと。 「そうですか。では、貴女の判断を聞かせてくださるかしら」 「はい。あの女は、悪人(・・)です」  あの人間はとても優しく評判も良かった。  それは、とても不自然なほどに。  彼女は人の視線がある場では善人の顔をし、裏では悪人の顔を見せ他者を虐めていた。  誰にも知られずに隠していたようだけど、観察をしていた私が気づかないはずがない。  幼稚園、小学校、中学。  全てで彼女は他者を貶し蔑んだ。  善人の顔とは似つかない。  それは悪魔と言える所業。 「善行、そして観察、共に合格です。貴女は今をもって天使見習いから正式な天使として認めます」 「ありがとうございます。これから天界のために尽くしこの身を捧げます」  晶、貴女のわかりやすいほどの善人と悪人の使い分けのお陰で、私は天使になれた。  人間界での私の友達。  貴女のこの先の未来がどうなるのかはわからない。  一つ分かることは、死後の世界で私が貴女に会うことはないということ。  さようなら。  私の観察対象(友達)。 《完》
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