ベルリンの天使

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 あんな小さな少女が読んでいたとも思えない本。しかし、彼女が私をこの本と繋いだのは疑いようがない。  図書館を出ると、その少女がまたしても現れた。今度は目の前だ。私の、すぐ目の前。 「一緒に帰ろ」 「え?」 「私のお家。美味しいご飯もあるから」 「あなた、天使なの?」  私がそう少女に聞いたのは、彼女の背中に羽があったから。カウチンヤーンで編まれた赤いセーターの背中に、真っ白な羽の模様。「天使」と言われて、少女は軽く飛び跳ねた。 「これだけしか飛べないから、きっと人間だと思う」  少女はそう言って少し笑っただけで、私の前を急ぎ足で進みだした。大人の私でもなんとかついて歩いていける速さだ。 「このアパートだよ」  五分も歩いただろうか。私はそのアパートの住人を一人知っている。  つい最近私が勤める病院を退院した男性の住むアパートだ。 「お嬢ちゃんって、ダミエルさんの娘さん?」 「違うよ」  少女はそう言ったが、向かった部屋はその男性の部屋だ。 「ただいま!」
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