ベルリンの天使

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 少女がダミエルさんの部屋をノックして言うと「開いとるからどうぞ」と声がした。その声を聞いて、すぐに少女はドアを開けた。中の住人が「おかえり」と言わないのが不自然な気がした。 「あの、こんばんは。夜分遅くに……」 「ん? おや、先生か」  住人はやはりダミエルさんだった。病院内では見たことのないダミエルさんの晴れやかな顔を見て、私は正直驚いた。  彼の病気は現代の医学ではどうしようもできないものだった。できることは対処療法だけ。痛みが出たときに鎮痛剤を打つくらいしかない。激しい痛みと、筋肉の萎縮。四肢が彼の意思通りに動く時間もごく短くなっている。  そして、少女が言っていた通り、美味しい食事もあるようで、さっきから空腹だった私の胃がいつ雄叫びを上げるか緊張していた。 「先生も食べていかれますか? 天使(エンゲル)にそう言われたんでしょう?」 「エンゲル?」  私は隣で微笑む少女を見て目を丸くした。まさか本当に天使とは。 「名前を教えてくれんでな。仕方なくそう呼んどる」
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