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8月上旬
夏休みになると、遥大は自宅周辺で夏期講習とアルバイトに励む生活に入った。遥大は写真部に所属しているが、3年生には夏季休暇中の出席を求めておらず、少なくともお盆が終わるまでは、学校に出向かなくてよかった。
高校生活最後の出品となる文化祭の展示に向けて、いい写真を各自数枚用意しておくよう顧問から言われている。2年半続けたアルバイトもいよいよ最終出勤月を迎えたので、店長に頼んで、店内で数枚撮らせてもらおうと遥大は思った。
遥大のアルバイト先は、駅にほど近い雑居ビルの中にある、カフェ兼ライブハウスだ。といっても客が20人も入れば満席になる小さな店で、毎週金曜の20時以降のライブタイムは、ほぼ店長の趣味で開催されている。
遥大はこの店で週3日、夕方から閉店まで働いているが、あくまでも周囲にはカフェバイトだと話していた。金曜の夜はこれまた店長の趣味で酒を出すため、店の雰囲気ががらっと変わる。いかがわしいとまでは思わないし、必ず22時までに上がらせてくれるが、あまり高校で大っぴらにしたくない。とはいえ世の中は狭いので、例えば教員などが来てもすぐにバレないよう、ライブタイムになると遥大は眼鏡をコンタクトに変え、前髪を上げるなどしていた。
センター試験の数学の過去問題をキリのいいところで解き終わり、遥大はカフェ「レイクサイド」に向かった。太陽は壊れたかのように、容赦ない光を全力で地上に降り注いでいた。自転車を漕いでも風は生温く、強い日差しであっという間に汗ばむ。
カフェは雑居ビルの3階のワンフロアを使い、入り口は1か所だ。遥大が店の扉を押すと、10人ほどの客が皆冷たいものを飲んでいた。
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