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金澤が17時に帰り、18時半に喫茶と軽食のラストオーダーを取った。その30分後に一旦客が全員引くと、宮間と遥大の2人だけで、店内のレイアウトを変える。
テーブルの向きを変えて入り口側に寄せ、店内の奥をステージに見立てる。4人掛けのテーブルは見かけ以上に重いのだが、宮間はひょろっとした身体つきにもかかわらず、これを1人で動かしてしまう。遥大は彼について、てきぱきと椅子を移動させた。
「今日のバンドは3人やけど、キーボードとフィドルがいてるから、ちょっと広めにスペース取っといたって」
宮間の指示に従い、テーブルを少し後ろに下げた。ゲストも狭い店だと理解した上でここを使うが、彼らの楽器が何かにぶつかるような事態は避けなくてはいけない。
「お客さんは予約で18人、まあ満席御礼やな」
はっきり言って遥大は、こんな狭い店でぎっちりと座り、小一時間も音楽を聴く人の気が知れない。前の席はテーブルを挟んでいるが、演者に手が届く位置だ。演者にしても、アンプは使えず、ヴォーカル以外にはマイクも出さないステージ(それでも聴く側にすると音は大き過ぎるくらいである)で、よく演奏する気になるなと思ってしまう。
宮間がエプロンを外して酒の入った棚の鍵を開け、遥大が眼鏡をコンタクトに変えて前髪をピンで留めていると、本日の演者がやってきた。
「こんばんは、今日はよろしくお願いしまーす」
明るく言いながら入ってきた30代くらいの男性は、キーボードの入った袋を担いでいた。いらっしゃい、と宮間が応じ、遥大が彼らを控え室に案内する。2人目の丸っこい男性はギターを持ち、3人目の背の高い若い男性が珍しそうに店の中を覗いている。
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