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大神官長の目配せで馬車は走り出し、正門へと向かった。神殿はどうやら切り開いた森の中にあるらしく、小窓から見える景色は鬱蒼とした森だった。道は整備されているが、舗装されていないので時々ガタガタと揺れる。
アリッサは組んだ足の上で何やら手紙を書いているようで、小さく折りたたむと、これまた小さな筒に入れ、小窓から出した手に鳥が舞い降りてきた。
「これをシンチェリタ公爵に⋯⋯」
そう囁いて放すと、鳥はある方向へ一直線に飛んで行った。茫然とした瞳で見ていた少女は、ポツリとか細い声で呟いた。
「シンチェリタ⋯⋯。それって、さっきの人も……」
「シンチェリタ公爵は君の父親だよ、オネスト・テオドロ・シンチェリタ公爵現当主。僕の叔父に当たる人。ちなみに、さっきの大神官長はその弟」
「だから、あんな話し方だったのね。それに貴族制度もあるのか⋯⋯。
王子様の身内なら、この〝ペアラ〟って子の家が公爵ってのも頷けるわ。王族からの派生だものね」
「⋯⋯まるで自分の名じゃないみたいに言うね」
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