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1話 助けてくれたのは王子さま
「ある日突然」という言葉は実際にあるものである。それも、まったく預かり知らぬ人物になり、身に覚えのない衣服を身に纏い、見覚えのない敷地内を逃げ回る事になるなど、誰が想像できたろう。
「あっちに行ったぞ!」
「逃がすな!」
「追え、追えーっ!!」
鎧を身に着けた兵士らしき男達に追われる中、ただただ必死に逃げ惑っていた。ここがどこで、自分が今どういう状況なのか整理するのにじっくり考える時間が欲しかった。しかし、現実は許してくれない。いや、むしろ現実であって欲しくない。夢なら早く覚めてくれと切に願う。
(なんで⋯⋯、一体どうなってんのよぉ!?)
逃げても逃げても、しつこく追ってくる兵士達。始めは二人だったのが、次第に倍以上の人数に増えていた。どの男も少女より背が高くて屈強な身体をしているのはすぐにわかった。自分の足では、いずれ追いつかれる⋯⋯。それでも少女は必死に足を動かす。脚はもうとっくに限界を迎えていて、脹脛は固くなった感覚になり、裸足の足は出血していて痛みが増すばかりだ。息も上がって、喉の奥が痛い。
「あ⋯⋯っ」
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