1話 助けてくれたのは王子さま

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 不意に後ろから髪を引っ張られ、バランスを崩したところ、掴んだままの兵士はニヤッと笑みを浮かべて引っ張り上げる。 「うぅ⋯⋯っ」  足に力が入らず、上手く立てないのを目にした兵士は、してやったりと口角を上げて、更に少女の髪を掴む手を持ち上げようとする。掴まれた髪を持ち上げられるほど頭皮に痛みが走り、少女は呻きながら顔を歪めた。 「捕まえたぞ、この侵入者め!」 「ちが⋯⋯っ、知らな⋯⋯」 「とぼけるな、このアマ!」 ──助けて!!  男の怒鳴り声に小さな悲鳴をあげて、肩を竦めた時だった。 「ねえ、何してるの?」  目の前に仁王立ちしている少年が居た。いや、声からして少年ではあるが、見た目は腰まで長い髪を三つ編みにして垂らし、睫毛の長い目は少女のように大きく、身長もまだ成長段階といったところだった。元から生意気そうに見えるだろう、その目は吊り上がっており、兵士は声が出なくなっていた。  後から駆けつけた兵士達が、少年が誰なのか認識した途端、即座に身を低くして跪く。
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