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不意に後ろから髪を引っ張られ、バランスを崩したところ、掴んだままの兵士はニヤッと笑みを浮かべて引っ張り上げる。
「うぅ⋯⋯っ」
足に力が入らず、上手く立てないのを目にした兵士は、してやったりと口角を上げて、更に少女の髪を掴む手を持ち上げようとする。掴まれた髪を持ち上げられるほど頭皮に痛みが走り、少女は呻きながら顔を歪めた。
「捕まえたぞ、この侵入者め!」
「ちが⋯⋯っ、知らな⋯⋯」
「とぼけるな、このアマ!」
──助けて!!
男の怒鳴り声に小さな悲鳴をあげて、肩を竦めた時だった。
「ねえ、何してるの?」
目の前に仁王立ちしている少年が居た。いや、声からして少年ではあるが、見た目は腰まで長い髪を三つ編みにして垂らし、睫毛の長い目は少女のように大きく、身長もまだ成長段階といったところだった。元から生意気そうに見えるだろう、その目は吊り上がっており、兵士は声が出なくなっていた。
後から駆けつけた兵士達が、少年が誰なのか認識した途端、即座に身を低くして跪く。
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