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8話 突きつけられた現実
目が覚めると、白い天井が視界に入った。
今は夜らしく、月明かりに照らされた部屋は薄暗い。
四隅を見やると、見慣れないカーテンで囲まれている事に気づく。どうやら天蓋ベッドらしい。風が入っているらしく、レースのカーテンが微かに揺れた。
(天蓋付きにした覚えないんだけど⋯⋯)
起き上がろうとするとベッドのスプリングは程よく、枕も海外ドラマで見たようにいくつも重ねられていて、ふかふかしていた。そして、ベッドはクイーンサイズ程に大きい。自宅にあるセミダブルサイズのベッドでない事は明白だった。
カーテン越しに辺りを見渡すと、二〜三メートル離れたところで窓ガラスの扉が開いていた。
(ここ⋯⋯、どこ?)
最新の記憶を辿ろうとすると、薄紅色の長い髪を三つ編みにして垂らした少年が脳裏を過ぎる。中性的な面立ちで、細身でありながら軽々と抱き抱えた。
『違う人物となって、人生を歩む夢を見ていたわけだし』
(違う⋯⋯人物⋯⋯)
瞬間、〝白城凜空〟として生きていた人生が、実は夢であったと告げられた事を思い出した。
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