8話 突きつけられた現実

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 両親の笑顔、友達、同僚、上司、行きつけのカフェで親しくなった店員。それまでに出会った様々な面々が脳裏に浮かび、やがてヒビが入ってパリンッ──と割れたような音がしたような気がした。 (嘘よ⋯⋯、嘘⋯⋯っ)  ビデオ通話して、画面を通して満面の笑顔を向ける仲睦まじい両親が思い浮かぶ。  その前は昼休憩に同僚とカフェでランチしていた時の会話も鮮明に覚えている。今一緒に住んでいる彼氏の愚痴を延々と聞かされていた。  来週には小学校時代の友人と会う予定があり、青山のカフェでランチしようと話していたのだ。その友達からは、度々リアの両親が話題になり、「あんな夫婦になりたーい」と言われたものだ。   「だって⋯⋯、さっきまでママ達と電話してたのよ⋯⋯!?」  ふとスマホを探そうとして手探りするが、当然寝具以外何も無かった。 「目が覚めた?」  不意に暗闇から第三者の声がして、全身が大きく震えた。声のした方を見ると、開いていた扉はバルコニーになっているらしく、少年はそこからゆっくりと近づいて来る。 「あ⋯⋯」
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