8話 突きつけられた現実

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 いつか誰かにも、こうして泣いた時に抑えるように言われたような記憶が脳裏を掠める。その時も抱き締められて、宥めるように相手は言っていた。 『喘息になりやすくなる。落ち着いて⋯⋯、大丈夫』  息を吸う度に喉が震え、呼吸が難しくなる。  誰かに抱きついて泣き喚いたのは、いくつ以来だろう?  声に出して泣いたのは、いつ以来だろう?  人の温もりに触れたのは、いつ以来だろう?  そう思いながら、リアはアリッサの腕の中で泣き喚いた。途中、使用人の一人がリアの様子が気になって部屋を訪れたが、アリッサはリアの背中を撫でる掌をその方に向けて制した。使用人は頭を下げて静かに部屋を出た。 「ごめん⋯⋯、辛い思いさせた。遅かれ早かれ知るとはいえ、君を傷つけた」 「うぐっ、ひっぐ⋯⋯っ」  落ち着いては声を上げるのを繰り返す度に震えるリアの身体を、まるで子供をあやすように頭と背中を撫でる。  今アリッサにできる、精一杯の慰めだった。
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