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10話 君は君のままでいい
リアは、〝自分は何らかの切欠でペアラの中に意識が入り込んだ〟、〝突然の心不全か脳不全によって自分は死んで、転生した〟と割り切ったはずなのに、身体が十代だからなのか精神的に弱くなっているようで情けなくなる。
「君の存在を否定することは、君自身であっても僕は許さない。君はペアラであって、リア。リアであって、ペアラだ。君は確かにここに⋯⋯僕の目の前に居る。この世でたった一人の存在なのを忘れたら許さないよ。絶対に⋯⋯」
「アリッサ王子⋯⋯」
「やっと呼んでくれた」
アリッサは今にも泣きそうな顔で、くしゃっと笑った。
「でも、〝王子〟は要らない」
嬉しさのあまりか頬擦りするアリッサに、リアはされるがまま。むしろ、リアは嫌悪感がないので抵抗する意思がない。
なので、そのままどう呼んでいいのか問うのを続けた。
「じゃあ、アリッサ様⋯⋯?」
「〝様〟も要らない」
笑いながら頬擦りの延長で、どさくさに紛れて頬に口付けされても押し退ける気は起きなかった。
これがペアラ自身の身体に染み付いた彼への想いの名残りなのか定かではないが、くっついていると不思議と心が安らぐのをリアは自覚した。
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