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11話 芽生える想い
目が覚めると左の腕に重みがあり、そちらを見ると待ち焦がれていた少女が寝息を立てていた。世界を混沌の闇から救う為にその身に宿し、神殿の深くにて横たわって何百年も眠り続けていた少女が、腕の中に居た。
ゴロンと仰向けになると、寝心地の問題なのか、「んん⋯⋯」と不服そうに眉を顰めて、アリッサの脇の下で顔をくっつける。同時に腕も回されて抱きつかれた状態になり、再び横向きになって少女を抱き締めた。
自分が知るはずの少女なのに、昨夜を思い出せばまた別人の少女と出会った気分になる。長命種の自分達からすれば、三十五歳はまだまだ子供だが、リアの世界ではどうだったのか、どんな家庭で育ち、どんな人達と出会ったのか知りたくなってきた。
確かに、ペアラ本人でない──が、記憶の片鱗があるあたり、同一人物には変わりないだろう。会話した雰囲気では、姉と同年代にも感じられた。
(約束⋯⋯か。こうして腕の中に居るだけでも、ただ傍に居られるだけで、もう⋯⋯何も望まない。もう⋯⋯)
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