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アリッサはリアの額に口付け、起こさないようにそっとベッドから抜け出す。後ろ髪を引かれる思いではあったが、まだ寝息を立てているリアを残して部屋を出たその足で、一階にある執事室に向かい、ノックする。返事があったので、部屋へと入った。
「これはアリッサ様。おはようございます」
「悪いな、朝早くに⋯⋯。実はペアラの事で相談があって来たんだ」
既に身なりを整えた状態でアリッサを出迎えた初老の男は片手を胸に、もう片方の手を腰に当てて頭を垂れた。
「とんでもございません。いつ如何なる時も執事たる者、当然の事でございます」
アリッサは戸に凭れて腕を組み、幼い頃から知る執事長のイゴール・オルフィーノを見つめる。彼は先代国王の旧友にあたり、アリッサ同様、ペアラの事も幼い頃から知っている。昨夜帰宅した際にも、アリッサに抱えられて眠るペアラを目にした時には涙を流さないよう懸命に堪えていた。
「昨夜の騒ぎは察してるだろうが、まだ記憶障害の混乱はある。⋯⋯まあ、端的に言うと、ここでの事は覚えてないよ。僕の事も、イゴールやレベッカ達の事も⋯⋯。
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