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そこで、使用人達にペアラの事で通達して欲しい事があるんだ」
アリッサは、記憶障害に伴ってパニックを防ぐ為に、ここでだけでも彼女を〝リア〟として扱って欲しいと告げた。
「リア⋯⋯? いったい、どちら様の⋯⋯」
「彼女はペアラではあるけど、夢の中では〝シラキ・リア〟として生きてきた。自分が〝ペアラ・シンチェリタ〟という記憶がまったく無い。加えて、自分の歩んできた人生や関わってきた者達がすべて偽りと知ってからの喪失感で酷く混乱している」
経緯を伝えながら、アリッサは昨日の自分の軽率さに恨めしさを感じた。もっと慎重に言葉を選ぶべきだった。どの道、遅かれ早かれ彼女に事実が伝わるとはいえ、衛兵達に追われた恐怖の後に伝える事ではなかったろう。
アリッサが自身で反省してる中、イゴールはようやくリアの現状を把握し、彼女が気の毒で仕方なく嘆息を吐く。昨日は神殿の衛兵達に追い回され、暴行を受けたと聞いた時は肝が冷えた。突然知らない光景の中で目が覚め、知らない者達に追い回された恐怖はどれ程だったのだろう。想像するだけでも、ひどく胸が痛む。
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