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明らかに苛立ちを露わにしたアリッサは、更に眉を吊り上げて兵士達を怯えさせた。
まだ少年とはいえ〝王子〟と〝兵士〟、どちらが立場が上か傍目からでも明らかだ。下手に王子の不興をかったのであれば、死罪も免れない。いや、それはまだ良いかもしれない。もっと酷ければ、一家が領土や身分を剥奪され、流罪になる場合もあるのだ。それを恐れている兵士達に、冷や汗をかかない者は居なかった。
少女の髪を掴んでいた兵士は慌ててその手を離し、王子にひれ伏した。その為、ドサッと音を立てた軽い衝撃音と共に、少女の頭部に衝撃が走る。もう、身体のあちこちが痛くて、いっそのこと早く楽になりたくさえ思う。
「た、大変申し訳ございませんでした!! アリッサ王子殿下のお連れとは知らず⋯⋯!」
「まあ、離してくれたならいいよ。あんた達は仕事しただけだしさ」
アリッサは先程と打って変わったように、ニッコリと笑みを浮かべた。それは少年らしい、あどけない笑顔だった。
「僕も紛らわしくさせてごめんね。今度から迷子にならないようにさせておくからさ」
「ははっ」
「じゃあ、もう仕事に戻っていいよ。──ああ、そこのあんた」
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