2話 小さな小庭

1/5
前へ
/56ページ
次へ

2話 小さな小庭

 兵士達の気配がなくなるとアリッサは短く嘆息を吐き、まだ恐怖で震えている少女を伺う。 「もう大丈夫。立てる? もっと早くに気づけなくて、ごめん⋯⋯」  さっきまでの態度とは打って変わり、アリッサは柔らかな笑みを浮かべて、伸ばした手で少女の頬に付いた汚れを拭う。まだ歯がガタガタとするが、少しずつ落ち着いてきた。 「あの⋯⋯、どうして⋯⋯?」  震える声でやっと出た言葉がそれだった。確か、追いかけてきた兵士達はこの少年を〝王子殿下〟と言っていた。そのような称号を持つ国は限られており、自身が知る限り、自分が暮らす国では〝殿下〟は付けられても〝王子〟と呼ぶ国民は誰一人として居ないはずだ。少なくとも、耳にした記憶が無い。  そして、この少年は少女の事を「公爵令嬢」と呼んでいた。 「ペアラは覚えてないかもしれないけど──」
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加