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2話 小さな小庭
兵士達の気配がなくなるとアリッサは短く嘆息を吐き、まだ恐怖で震えている少女を伺う。
「もう大丈夫。立てる? もっと早くに気づけなくて、ごめん⋯⋯」
さっきまでの態度とは打って変わり、アリッサは柔らかな笑みを浮かべて、伸ばした手で少女の頬に付いた汚れを拭う。まだ歯がガタガタとするが、少しずつ落ち着いてきた。
「あの⋯⋯、どうして⋯⋯?」
震える声でやっと出た言葉がそれだった。確か、追いかけてきた兵士達はこの少年を〝王子殿下〟と言っていた。そのような称号を持つ国は限られており、自身が知る限り、自分が暮らす国では〝殿下〟は付けられても〝王子〟と呼ぶ国民は誰一人として居ないはずだ。少なくとも、耳にした記憶が無い。
そして、この少年は少女の事を「公爵令嬢」と呼んでいた。
「ペアラは覚えてないかもしれないけど──」
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