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少女は思わず目を見開いた。どうやら、自分はまったく別の人物になったらしい。姿形や生きてきた年数なども、この身体とは違うのだ。髪の色や腰まであるウェーブがかかった銀髪の長い髪、きめ細かく瑞々しい肌。如何にも十代盛りの少女の身体だった。そして、走っている時に気づいたのが、視界の高さだった。まるで身体が縮んでしまったというより、若返ったのかと始めは思った。兵士達に追われだしてから、身長からして子供になった気分だった。
アリッサは、そんな少女の心情に気づく風でもなく、続けてこう言った。
「僕は覚えてるよ。君が眠りに就いた日も、その前の日々も⋯⋯」
(この子の名前は、〝ペアラ〟⋯⋯)
アリッサに触れられる感覚がとても懐かしくはあるが、それは前の身体の時の出来事──もう、二十年も昔の事だ。ひとつの思い出が過ぎり、少し懐かしさと切なさを感じたが、それ以上にアリッサの方が寂し気だった。
気遣うのと同時に、何かを求めているような──期待しているような目で少女を見つめていた。無意識なのかどうか定かではないが、少女には見て取れた。
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