2話 小さな小庭

3/5
前へ
/61ページ
次へ
「とりあえず、ここじゃあ話はしずらいから、移動しよう。立てる?」  少女はアリッサの手を借りて立ち上がろうとするが、全力疾走した足は力が入らず、座っている事が不思議なほど、腕もプルプルと震えて力が入らない。それでも片膝を付けて勢いに任せて無理に立とうとしたが、よろめいてしまった。それどころか、足の裏が出血していて酷く痛い。咄嗟に支えたアリッサは彼女の膝と背中に手を添え、そのまま軽々と持ち上げた。 「ひゃあ⋯⋯っ」 「ほんと、酷い目に遭わせてごめん⋯⋯。後で足の治療をさせよう」  思いもよらぬ事に驚き、自分でも驚く程の高い声が出た。いったいこの華奢に見える少年のどこに、一人の人間を軽々と持ち上げられる力があるのか不思議だった。  そして、アリッサの顔がより近くになり、急に恥ずかしくなって思わず俯いてしまう。 (お、お姫様抱っこ⋯⋯っ。しかも、あの時はそんなに意識してなかったのに、なんで今こんな意識しちゃってるの!? 乙女かよ、あたし!) 「しっかり捕まってないと、落ちるよ?」
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加