第15話 特定できた僕

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第15話 特定できた僕

 僕の名前は鷲見(すみ)恋人(れんと)。  小学校三年生。  やっと最強の武器を手に入れた。 「よし」  僕はこのカッコいい相棒に跨って、ある場所を目指す。  僕の相棒? もちろん、この自転車だ。  一ヶ月の猛練習のすえ、やっと僕と相棒は心が通じ合った。  僕が今日目指すのは、隣町のある家。  そう、僕の初恋(今も継続中)、花寄(はなより)さち子ちゃんの家だ。  さち子ちゃんに初めて会ったのは5歳の時。  僕を気にかけてくれたさち子ちゃんが、背負ったランドセルに激突された瞬間、僕の心もさち子ちゃんに激突された。  当時の僕はまだ子どもだったから、さち子ちゃんちの住所がわからなかった。  だけど僕は諦めなかった。帰りの車の窓からの景色を、全部覚えて家に帰った。  あの日、僕はまずお母さんから隣町と僕の町が乗ってる地図を買って欲しいとお願いした。  なんでそんなの欲しがるのか、お母さんは不思議がっていたけれど、なんとか誕生日に買ってもらえた。  買ってもらえるまで、僕は窓からの景色を全部メモに書いて、毎日眺めて覚えた。  そうしていざ、地図を目にした僕はがくぜんとした。メモと地図を合わせるのがとても難しかったからだ。  でも僕は諦めなかった。毎日思い浮かべていたから、あの日の窓からの景色は絶対忘れない。それで少しずつでも地図を辿ることが出来た。  幸運だったのは、さち子ちゃんの家が一軒家で、表札もちゃんと出していたことだ。  なんとか地図を辿った僕は、ついに「花寄」と書いてあるしかくを見つけた。  あの興奮は、僕至上最大のものだ。至上の喜びだった。  そうして、さち子ちゃんちへのルートと、最強の相棒を持った僕は、とうとうここまで来た。  お母さんには遊びに行くと嘘をついて、隣町のさち子ちゃんのお家の前まで来ている。  絶対、ここだ。間違いない。  僕は何軒か離れた所の電柱の影に陣取って、さち子ちゃんが学校から帰ってくるのを待った。 「ふんふふん、ふんふーん」  さち子ちゃんだ! セーラー服! 中学生になってる! 尊い! 「ただーいまんもす、ずっころげー」  間抜けな鼻歌うたって、家に入っていった! まさにさち子ちゃん! 尊い!  あの時よりも、ずっと大人になったさち子ちゃん。  だけど、全然変わらないさち子ちゃん。  僕の興奮はあっさり更新されていた。  相棒よ、これからは毎日さち子ちゃんに会えるぞ。  僕はそれから隣町に通い詰めた。
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