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第18話 待ち伏せする僕
僕の名前は鷲見恋人。
今年やっと中学生になった。
部活なんて入らない。
僕は放課後は忙しいんだ。
中学進学のお祝いに、迷わず自転車と答えた。
これで僕の生涯の相棒は3代目。自転車3世だ。
さち子ちゃんは高校生になっている。
市内にある県立高校の三年生だ。バスで通っている。
朝は僕も忙しいから、さち子ちゃんを見に行くのは放課後だ。
学校が終わったらすぐに相棒とバス停に行く。
小学校の間は僕の方が絶対早いから、帰ってくるさち子ちゃんを目撃できた。
でも中学校になってからはどうだろう。
さち子ちゃんは高三だから、部活もそろそろ引退だろう。帰りも早くなる。
だから僕は部活なんかに入るヒマはない。
それにしても、さち子ちゃんが市内の高校に通ってくれて、僕はラッキーだ。
だから僕とさち子ちゃんは縁がある……とは言わない。ただの偶然だ。
僕のしていることはストーカーってやつだと思う。
でも僕は絶対にさち子ちゃんに話しかけたりしないし、家の側で待ち伏せするのもさち子ちゃんが中学まででやめた。
僕はさち子ちゃんを見に行っているのであり、会いに行っているわけではない。
一方的に距離感をバグらせたりしない、と決めている。
さち子ちゃんが高校生になってからは、バスから降りるのを遠くから毎日見るだけ。
家についていったりはしていない。自転車でついていったら、絶対気づかれるし。
さち子ちゃんが近場の学校に通ってくれる幸運を、僕は毎日感謝している。
勝手な理論武装だってわかってる。
それでも僕は僕なりのルールを遵守して、これからもさち子ちゃんを見続ける。
絶対に多くは望まない。それが僕のプライドだ。
バスが停まった。さち子ちゃんが降りてくる。
おい、ちょっと待て。なんだ今日は。
さち子ちゃんがツインテールをしている……だと!?
いつもボブカットの髪に何もしない、ナチュラルスタイルなのに。
学校で何があったんだ! 可愛い!!
写真撮りたい! だめだ、証拠が残る!
決めたじゃないか、さち子ちゃんの姿は網膜のみに焼き付けるって!
「たららーん」
さち子ちゃんがご機嫌でスキップ踏んでる! 尊い!
ツインテールと関係があるのか!?
写真撮りたい! ダメだ、堪えろ!!
僕に思春期が訪れようとしていた……
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