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第20話 慰められる後輩 +おまけ
私の名前は、花寄さち子。
市役所勤務八年目の三十歳。
最近、気になる後輩がいる。
「花寄さん、今夜ヒマですか!」
帰り支度をしながら、畑野さんが何やら思いつめた顔で言った。
「え?」
クール女子の、畑野氏が、私を、アフターに誘う、だと……?
「あの、鷲見くんが今日、第一発見者になってしまったそうで……」
ああ。
私はなんとなく理解した。ご老人の孤独死に遭遇したんだろう。
「まあ、福祉課にいればそういうことはあるよねえ」
涌井さんも慈愛の顔で頷いた。
「だから、同期で今日は騒いで飲もうってなってるんですけど、私、なんて慰めたらいいのか……」
畑野さんも良いとこあるんだよねえ。
「なので、花寄さん、一緒にどうですか!」
「いやいやいや……」
私はもちろん首を振った。
「改まって慰めなくてもいいんじゃない? 同期の仲間だけで楽しく騒いであげなよ」
「そうですかね……?」
「うん。特別なことせずに、ただ、楽しくね」
私と涌井さんは、にこやかに畑野さんを見送った。
若いって、いいよねえ……
翌朝、私は出勤してメールを一通送った。
昼休み。チャイムが鳴ったかと思ったら、バタバタと大きな足音を立てて、鷲見君がやってきた。
「は、は、花寄、先輩……!」
「おお、鷲見君、お疲れちゃーん」
「あ、あのっ……?」
「まあまあ、そこにお座んなさいよ」
息をきらせてやってきた鷲見君を、私の席の隣に座らせて、私はいそいそ奥に引っ込んだ。
「むっふっふっふ、ひかえおろう。これなるは、あの◯ディーバのホットチョコであるぞ」
甘い香りむんむんのカップ達を持って、私は奥から再登場。
「よっ! 待ってました!」
「いい匂い!」
涌井さんと畑野さんも、御相伴にあずかれる幸運に歓喜しておるわ。
「はい、鷲見君もどうぞ」
あったくて、あまーいホットチョコを、私は彼の目の前に置いた。
「いいんですか……?」
鷲見君は遠慮がちに私を見ていた。
「ふっふ、奥まった会計課だから、こんな匂いのすごいのも飲めるんよ。堪能なさいよ」
「うまい!」
「高級チョコ、最高!」
先に飲みやがったな、主査と主事。
「鷲見君も、ぐーっとおいき」
さあさあと、私が手を振って煽ると、鷲見君はようやくカップに口をつけた。
もっさりイケメンの頬が紅く染まっていく。
「……美味しい、ですね」
デパートで一番高級なやつだからね!
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祝! 20話突破記念
登場人物紹介〜好きな食べ物編
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花寄 さち子(30)
会計課主任
アジアン料理、郷土料理、紅茶
鶏肉派
鷲見 恋人(25)
福祉課主事
ハンバーグ、さち子さんの好物全般
牛肉派
鴨川 斗織(31)
建築課主任
ラーメンと半チャーハンセット
豚肉派
畑野 環(24)
会計課主事
ベーグルサンド
脂身撲滅派
涌井 雄二郎(40)
会計課統括主査
ざるそば(特盛)
モツ派
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