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2023年6月22日
部活が休みだった木曜日の夕方、いつも強引な知世が今日は絶対にモンブランが食べたいと言い出したので、仕方なく駅前のカフェに向かって歩いていた。
住宅街に差し掛かった時である、細道と交わる十字路で不穏な視線を感じた.
「誰かに見られているな」
「そうね、何かいるわね」
「ニャ~」
大きな黒い猫が細道からゆっくり出て来て、私達の前で立ち止まった。
「まあ、ふてぶてしい猫ちゃんだこと」
知世が黒猫に近付こうとするとチラチラとこちらを見ながらまた歩きはじめた。その行先を目で追うと、それまでそこには何も無かったはずの空き地に何時の間にか蔦で覆われた古びた店が建っていた。掲げられた看板には怪しげな店名が付けられている。
魔女喫茶 Post
魔女? どう言う事なのだろう。ラノベとかに出て来る魔女の事なのか魔性の女の事なのかどちらにしても可笑しな精神状態の店長がやってそうな店である。
「クンクン」
知世が鼻で匂いを嗅ぎはじめた。
「あの店からとてつもなく甘い匂いがするわ」
「……」
私の鼻は知世ほど感度が良くない。なのでとてつもないほどの甘い匂いは感知できない。
「ねえ、入ってみましょうよ」
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