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知世は私の手を握り歩き出し入り口の前で立ち止まった。年季の入った木製の扉には笛吹き男を先頭に子供達を従えた彫刻が施されている。扉のレバーハンドルを下におろし躊躇なく扉を開くと正圧になっていたのだろうか甘い匂いが外に向かって一斉に排出された。
「さっき外で嗅いだ匂いだわ」
本当にとてつもなく甘い匂いだ。
中に入ると急に負圧になり扉がバタンと閉まった。私は慌てて扉のレバーハンドルを下ろしたが動かなかった。
「閉じ込められた! 怪物に襲われるかもしれない」
「ねえ、何をじたばたしているの?」
「レバーハンドルが固まってて扉が開かないんだよ!」
「落ち着いて、こういう時は軽く深呼吸をするものよ」
私は言われるままに深呼吸をした。
「扉を開く為にはきっと条件をクリアーしなければならないのよ」
「ここを出るだけなのに?」
「ここはそう言う所なのだと認識した方が良いわね」
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