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私は知世の腕に掴まり恐々と歩いた。
知世は平気なようでスタスタと歩く。
そしてチューリップランプが灯る席に対席で座ると私と知世はテーブルのまん中で鼻を突き合わせて小声で言葉を重ねた。
「怖っ!」
知世は普通に歩いていたので怖くないのだと思っていたがどうやら違ったようだ。
この席に至るまでにリンドウとユリとウツボカズラのランプの席があったが、誰も座っていないのにヒソヒソと話し声だけが聞こえた。それに何者かの視線が感じられ時々お尻を触られたような気がした。
「何だか怖くて手汗がびっちょりだわ」
「私も」
コトン
二人そろって下を見るといつの間にか通路に近いテーブルの端に柑橘系の薄い匂いがする水と魔女の横顔が浮彫されたメニューが置かれていた。誰が置いたのか分からないところが不気味である。
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