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「そか。でも立派だな。看護師の免許とったんだろ?」  紗夜は肩を竦めて「夢のプランB。生きていくには進まなきゃならないじゃない」と言ってから、自らの唇を食む。 「臣ちゃんはどうしてた?」  紗夜と同じように挫折に次ぐ、挫折。しかも未だにプランAにしがみついている。とっくに自分の限界に気がついていながら次に進めない往生際の悪さ。大見得を切って飛び出した大都会の片隅でアルバイト生活だ。 「普通に暮らしてたよ」  普通とは何をさすのか。ギリギリの生活でも飢えない程度に稼ぎ、言い訳の為にオーディションを受けては落ちる日々のことをさすのだろうか。 「私ね……臣ちゃんのフェイス◯ック見つけたんだよ。もうかなり前に。臣ちゃんが告知していた舞台とかテレビドラマとか全部観たの」  紗夜の言葉に頬をスッと寒気が走っていった。別名義でやっていたSNSが見られていたなんて、屈辱以外のなにものでもない。もし、もっと自慢できるような役が貰えていたら盛り上がるところだったかもしれないが、俺は羞恥心から気が遠退きそうになっていた。 「頑張ってたね。演技も上手くなったなって思って──」 「やめろよ! 恥ずかしいやつだと思ってみてたんだろ。成功するとか言いながら端役すら貰えない俺を……恥ずかしいと思ってたんだろ!」
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