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家族の仁義なき戦い!
「お前たちに、どうしても話しておかなければならないことがある」
父は険しい表情で、僕達兄弟を見回した。
「大変なことになった。……“アレ”が、突如として姿を消した。現在進行形で、行方不明だ」
「な、なんだって!?」
「本当なの、父さん!?」
「ああ……」
父の言葉に、僕と兄は顔を見合わせる。
彼が言うアレ、とは一つしかない。自分達が去年、苦労に苦労を重ねて手に入れたもの。あれをわが物とするために、一体どれほどの根回しをしたことか。
誰かに見られるようなことがあったら、ただではすまない。
絶対にこの秘密は隠し通すぞと、父と兄とともに誓い合ったのはそう昔のことではないというのに。
「……万が一アレが誰かの手に渡ってしまったら、大惨事だ」
彼はぐったりと項垂れて言った。
「何がなんでも、探しださねばなるまい。……タイムリミットは迫っている。あと二時間が限界だ。それまでに、徹底的に捜索するぞ」
「合点承知」
「りょ、了解した!」
何故行方不明になってしまったのか。もしや、何者かが奪っていったのか?
謎は残るが、今はその追及は後回しだ。
とにかく、一刻も早く確保しなければいけない。そうしなければ自分達の運命は――終わってしまったも同然となるのだから。
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