第1話:花嫁、襲来。

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第1話:花嫁、襲来。

その日の朝、志藤尊(しどうたける)は目を覚ました瞬間、自分の人生が劇的なビフォーアフターを遂げていることに震撼した。 いつもと変わらないオンボロアパートの八畳一間。いつもと変わらない年中敷きっぱなしの煎餅布団。 何もかもがいつもと変わらない景色の中に、昨日まで存在しなかったものが一つ。 尊がその昨日までとは決定的に異なる部分を睨みつけ、敵意に満ちた声で言う。 「…おい、さっさと起きろよ、クソ女。」 すると、布団のふくらみがのっそりと動き出しー…姿を現したのは、上半身裸の女だった。 まだ覚醒しきっていないのか、女は布団から起き上がったものの、ボーッとしたまま返事をしない。 所在なさげに視線を彷徨わせ、それからようやく尊の存在に気が付いて、少しだけ微笑んでみせた。 クソ、何でこんなことに。 尊は笑顔で挨拶を返す代わりに、女の顔をギロリと睨みつけた。 全ては、あの馬鹿親父のせいだ。 そう内心で諸悪の根源を呪いながら、拳を強く握り締め、忌々しい記憶をさかのぼってゆくー…。
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