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これは呪われた山田家に舞い降りた物語である。
善人は悪人に。
王女は王子に。
天使は堕天使に。
私の名前は山田天使。
名前は天使である。
「愛しの天使、起きなさーい」
朝が来る。
当たり前のように私のことを大声で呼ぶママを、十五年目にしてようやくおかしい事に気がついた。
小中学校までは地元だったし、幼なじみや先生にも不思議に思われることは無かった。
高校になって、地元とは違う級友とこれから高校生ライフを楽しもうかと、胸を弾ませていた入学式。
自己紹介の段階になって、ふと、おやと疑問に思うことになったのだ。
「山田天使です。よろしくお願いします」
初めが肝心と元気よく発言すると、ザワザワと周りがざわめき立つ。
「エンジェル……まじか」
「キラキラネーム」
「まぁ、名前負けしないぐらい可愛いし」
あれ?
反応が変?
うちの地元では、大也も紅玉も海も七音もいたから、全然気にならなかったのに。
確かにあいうえ順から自己紹介した時、みんな古風な名前だなぁとは思ったんだけど。
だいたい『山田』という見本の苗字に、一族総出でコンプレックスを抱えていた。
結婚する前のママの苗字は『極楽院』。
どうしてママは『山田』になってしまったの? と物心が着く頃にはキョウダイで責め立てたものだった。
ママ曰く、逆に特徴的な苗字ではなくフツーになりたかったんだって。
パパはそれこそ『山田』にコンプレックスを抱えていたから、産まれてくる子供だけでも個性的にしたいと思ったみたい。
そうして名付けられた私たち。
親の望み通りに育たないのが子供というもの。
兄・善人は正義感からか学校を牛耳っていた不良共の頂点に立ってしまい、ついたあだ名が悪人。
姉・王女は女子校でありながら、イケメン男子顔負けに女生徒たちをはべらかして、ついたあだ名は王子になりました。
私、天使はそんな兄姉を見て育ったからこそ、名前に恥じないよう、天使のように清らかに学校生活を送ろうと思っているの。
なのに。
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