0人が本棚に入れています
本棚に追加
私
「本当にお金に困っていたんですね…」「そのようだな…」
刑事たちが話しているのを聞きながら、私はどうする事も出来なかった。彼が犯罪を起こすなんて。でもそれは、きっと私のせいなのだ。そのことをこの刑事たちに伝えたい。彼は悪くはないのだと。でも。
刑事たちは部屋を見まわしている。彼は現行犯ということもあって、自分自身の犯罪は認めているらしいから、彼の話の事実確認に来ただけなのだろう。彼との生活の場を土足で踏みにじられるなんて、と思うととても悔しい気持ちになるけれど、でも私のせいだという後ろめたさがあるから、強く言うことなんてできない。
そんなことを思っていると、刑事の声がまた聞こえた。
「それにしても…彼女のためにお金が必要だったと言っていましたが…」
あぁ、やはりそうだったのだ、と私は思う。刑事は言葉を続ける。
「本当に恋人なんていたんでしょうか」
え、と私は思う。しばらく間をおいて、刑事はさらに続ける。
「しかし何でしょうね…」
それから私を見てぽつりと言ったのだ。
「この薄汚れた人形、趣味だったのですかね」
最初のコメントを投稿しよう!