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ユリアナは何も気づかないふりをして、むしろエリアスが仕事熱心になったのだからいいじゃないかと自分に言い聞かせた。
そんな中、またユリアナが昼寝をしたまま来ない日があった。
誰もいない務め場で、今まで感情を押し殺していたエリアスの限界が来た。
きっと今がチャンスだ。
人間の元へ行くには、今しかない。
堕天使は天使に見限られる。二度と天界に帰ってくることは許されない。
罰を与えられて天界から落とされるのではなく、自ら堕天使になるなどありえない。天使のタブーとして誰の話題にも上らず、いつかはエリアスの存在は忘れ去られていく。
それでも、今しかないと思ってしまった。
お世話になったユリアナに何も言えないのは悲しいが、見つかったなら絶対に許してはもらえない。
きっと罰を与えられたとしても、エリアスの場合は天界から落とされることもあり得ない。それではエリアスにとって罰にならないからだ。
「ごめんなさい」
エリアスは一粒の涙と謝罪を残して、純白の羽を羽ばたかせて天界から降り立った。
堕天する方法は知っている。そうした人が今までにいなかったわけではないからだ。
エリアスは下界へと降下しながら、何もない空間からきらりと輝く鋭い剣を出した。
ゆっくりと背中に回し、羽の付け根に当てる。
ぐっと剣を握る手に力を入れ、硬く目を閉じ、ひと思いに――。
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