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堕天使
天使というのはどこまでも感情などなく、下界で暮らす人間たちを見守るのが仕事。
エリアスも生まれた時からそのように習ってきたが、エリアスにとってその教えはとても窮屈なものだった。
そんなエリアスは、先輩天使のユリアナと共に担当地域の人間たちを毎日見守っていた。
人間というのはせかせかした生き物だな、というのがエリアスが持つ人間の印象だった。
時間に追われて走り回る姿を、エリアスはごろんと横になりながら眺める。それ以上にすることもなく、特別人間に手を貸すようなこともない。
ただ見守る。それが天使の務めだ。
あるとき、ユリアナがなかなか務め場所まで来ない日があった。
基本的に天使は睡眠も食事も必要ないのだが、暇つぶしとしてそれらを行うときがある。
ユリアナはそれを他の天使以上に嗜む節がある天使だった。
寝坊してくることも初めてではなかったため、エリアスは気にも留めていなかった。
ユリアナがいなくとも、エリアスはしっかり人間たちを見守っていた。
ただエリアスは他の天使とは違い、好奇心というものがあった。
人間たちの生活に興味を持ち、あれは何をしているのだろうと考えるのが好きだった。
可哀そう、痛そう、楽しそう、面白そう、悲しい、助けてあげたい、一緒に混ざりたい……。
感受性豊かなエリアスは、いつもユリアナに感情を持つなと怒られていた。
けれどユリアナがその場にいなければどれだけ人間に寄り添うような感情を持とうが、注意されることもない。
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