祖母が残してくれた本

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 朝は早く起きて、静かな家の中で勉強をする時間が好きだった。母が仕事に出かけると、リビングに広げた教材を開き、将来やりたいことに向かって一歩ずつ進んでいる。 「よし、今日も頑張ろう!」  自分に向けた小さな励ましの言葉が、今では自然と口から出るようになっていた。過去の自分では考えられない変化だった。  いじめに苦しんだ日々が、今ではまるで遠い過去のことのように感じられる。由美たちの冷たい視線や、無言の圧力で押しつぶされそうだった頃の自分は、もういない。  もちろん、完全に忘れることはできない。だが、祖母の残した本のメッセージを胸に、一歩前に進んだ今の自分には、あの日々に戻ることはないだろうという自信があった。  以前の学校に通っていた頃は、毎日が苦痛だった。教室に入るだけで心が沈み、由美たちの何気ない一言が深い傷を残した。だが、通信制の高校に通い始めてからは、自分のペースで勉強できる自由さが、自分に合っていると思う。
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