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ヒューイにとっての世界とは伯爵家の邸宅の一部だけだった。
自室とその近辺だけがヒューイの世界の全てで生活範囲。範囲外に行くことは許されず、いつも窓から外の景色を眺めていた。
窓の前にある文机に頬杖を突いて、外の景色をただぼうっと眺める。ヒューイの人生での楽しみなど、そんなものでしかなかった。
この世に生を受けて二十年。
両親は病弱なヒューイを伯爵家の恥として差別する。二人の弟も両親に影響されたのだろう。ヒューイを見下し、露骨に嫌った。
両親や二人の弟、使用人たち。ヒューイをバカにする人間はいつだって絶えない。ヒューイに出来る抵抗など、明るく振る舞って気にしていないように装うことしかない。
今後、望まぬ婚約をすることが決まっていたとしても、その夫に虐げられようとも。
ヒューイはたくましく生きると決めている。たった一つの淡い初恋の思い出を胸に抱けば、胸の底から希望が湧いてくる。
辛いことを耐えてこそ、あの人に恥じない自分になれるような気がするのだ。
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