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この世界には男女のほかに第二の性別というものがある。
支配者階級に多いアルファ。庶民階級に多いベータ。そして、どちらにも数少なくも存在するオメガだ。
ウォルドーフ伯爵家の長男として生まれたヒューイは、思春期の適性検査でオメガと診断された。
ヒューイは生を受けてからずっと病弱で、両親に目をかけてもらえなかった。それに合わさり、オメガの診断である。
両親は完全にヒューイを見放した。かろうじて主一家の一員として認識されていたヒューイは、この日からいない者扱いだ。
私室は邸宅の端っこに移され、数少ない世話役の使用人としか関わらない毎日。風邪を引こうが、怪我をしようが。両親や弟たちは見舞いにすら来ず、世話役の従者だけが甲斐甲斐しく看病をしてくれる。
生まれてからずっと孤独だった。思春期からはさらに孤独になった。楽しい思い出もなく、嬉しいと思うこともなく。なんなら、恋さえも知らずに自分は朽ちていくのだろう――と人知れず覚悟を決めた。
しかし、ヒューイが十四歳のとき。転機が訪れた。
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