夢は金細工師

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 春の北国は朝露に柔らかな日差しが跳ね、あちこちがキラキラと輝いている。その中を、一人の少女が荷車をカラカラ引いて歩いて行く。  この国の王都は、異民族に何度も攻撃され、その度に守りを固めてきた。高い壁と複雑な都市設計は敵を防ぐために考えられてきた先人の知恵だと、父から教わってきた。  おかげでずいぶんと迷いやすい。遠目に映る王城を目指して真っ直ぐ進もうとすると遠回りになる道作り、似たようなランドマークを複数建てて混乱させる街作り。地元の民でも手こずる工夫が随所にある。  ましてや、まだ幼い少女のクリサが迷うのは必然ともいえた。 「あれ、こっちだった……っけ?」 「どうした、迷子か?」 「え、えと……」 「空の荷車引いてキョロキョロしてるなら迷子だろ。どこに行きたいんだ」  ズケズケものを言うのは疲れた顔をした、自分とそう変わらない年齢に見える少年だった。虚ろな琥珀の瞳に東方訛りの少年はどこか影の薄い印象で、夢か幻の一種かに思えた。  この辺では見たことのない顔だし、旅人さんかな?
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