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「アッシュ、大丈夫?」
「……ああ、問題……ない……」
息を切らせて返事をすると左腕に巻いた外套を解いて手や顔を拭いた。灰や泥で汚れた外套は血に染まり、余計に汚くなった。それを躊躇なく纏うのだから、アッシュがなぜ奴隷生活から逃げたのかはなんとなく想像できた。
「ところで……オレの馬は……」
「戻ってきたみたいだよ」
振り返ると、街の方から馬が二頭やってくるのが見えた。片方はアッシュの愛馬、もう片方は。
「勇者殿、無事であったか!」
「ハラルドさん!」
キリアが連れてきたのは氷鉄騎士団長であった。立派な槍を掲げ、青灰色の瞳が鋭く辺りを警戒していたが、その必要がないと知ると胸を撫で下ろして優しい顔をする。
「なに、彼が往来で騒ぐものだから何事かと思ってね。問うと勇者殿が悪魔憑きと戦っているなどと言うものだから慌てて駆けつけた。助力は不要だったようだが……無事で何よりだ」
「ギルドの主要メンバーは別の仕事で出払ってたから、近くに騎士様がいて助かった。ねーちゃんのためにありがとう、騎士様」
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