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「結局、悪魔憑きって何なの?」
尋ねられて露骨に嫌な顔をするキリアだが、大好きなねーちゃんのために恐怖を押し殺して話し始めた。
「ぼくも詳しいわけじゃない。ハンターや騎士様の間で噂になる、普通とは比べ物にならない大きさになった獣だよ。……ねーちゃんが狩った熊も悪魔憑き……だと思う。人の味を覚えていて、人ばかり狙うんだ。
噂だけど、鷲と熊がくっついたような、普通の獣じゃない悪魔憑きも居るとか。悪魔憑きは、野蛮人が崇拝する邪神の魔術によって生み出された怪物なんだ。野蛮人と邪神は悪魔憑きを使って世界を支配するつもりなんだ!」
迫真の悪魔憑きの解説に、さすがのクリサもたじろいで、そ、そうなんだ……。と相槌を打つに留まった。
「ねーちゃん……怖くないの……? 二度も悪魔憑きと戦って、怖くなかったの……?」
「うーん……。怖かったよ? でも、誰かが悪魔憑きを倒さないと、誰かが襲われるでしょ?
その場に居た私がやらなきゃ、誰がやるの?
お父さんやお母さんやキリアや、フロキおじさんやゴードおじさんが居なくなっちゃう方がもっと怖い。だから私は、悪魔憑きが相手でも逃げるわけにはいかなかった」
「……ねーちゃんが勇者になった理由、分かったよ。ぼくもねーちゃんみたいに強くなって、悪魔憑きと戦う!」
弟はすっかり恐怖に打ち勝った。北の勇者が初めて人に勇気を与えた瞬間であった。
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