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何故かわからないけど……いつにも増して、彼の表情はキラキラしていた。何かいいことがあったのかしら? 疑問に思い彼を見つめると、いきなりカァッと頬を赤くした。
「お、おはよう、ローリス」
「おはようございます、カエサル様」
照れ照れの挨拶を交わした。
彼も昨夜のことを思い出したのかな? ……それは私にとっても、凄い経験で頬が熱くなるのを感じた。
(むず痒いわ)
「ローリス朝食の準備が出来た、食堂へ案内しよう」
エスコートするために出された、彼の手を取った。今、服を身につけていてわからないのだけど、彼は脱いだら魔物討伐でついた傷と、鍛えられた体、剣を握る手に硬い豆ができていて見惚れた。
(キャロルもだけど、相当訓練してきたのね)
「ローリス、ここが食堂だ」
考え事をしている間に、食堂へ着いていた。中からする匂いに、お腹がクウッと鳴る。
「お腹、空いたね」
王子より、王子スマイルの彼の後に続いて入ると。食堂の中に……え? 今日、肖像画で見た……亡くなったと聞いていた、彼の両親が朝食をとっていた。
「おはよう。カエサルが嫁をもらったと聞いて、いてもたっておられず来てしまったよ」
「フフ、よかったわね」
この風格、さすが2人の両親だ。私は「おはようございます」とスカートを掴み、彼の両親にお辞儀した。隣のカエサル様は「ハァー……っ」とため息付き。
「おはようございます、カザール父上、アーシャ母上。こちらに戻ってくるなら言ってください。陛下に気付かれないように、魔法をかけなくてはならない」
「もうかけてあるから、大丈夫よ」
「ハハハッ! アーシャの魔法は完璧だ」
私だけが分からない家族だけの会話。それに気付いたのか、カエサル様はコソッと「後で話すね」と言い、私の椅子を引くとその隣に座った。
「カエサル、本当によかったわね」
「ありがとうございます、母上」
「私達のように、仲良くしなさい」
「わかっております」
お2人は事後で、亡くなったと聞いていた。
今私の前で、穏やかに笑うカエサル様と優しそうなカエサル様の両親。表向きに、そう伝えたのには理由があるのかな? 私を嫌う公爵家とは違い、温かな雰囲気の中、食事が運ばれた。
朝食の後、遮音魔法をかけた応接間で、彼の両親とカエサル様から話を聞いた。
「さてと、話すか。ローリスは私達が生きていて驚いただろう。私と家内は、王家のやり方に疲れてしまった」
「えぇ。いくら力の強い騎士一族と魔力の高い魔女一族とは言え、頻繁に使われては疲れてくるわ。私達は表に出ることも許されず、力を使うだけ使われて、魔女一族はそうとうな怒りに震えているわ」
「私の一族だって魔物討伐の遠征、遠征、疲労困憊だよ。手柄はすべてあの化け狸陛下が持っていく」
「僕も陛下と話し、父上の言っていた事がわかりました」
うむっと、頷く。
やはり王家は自分の騎士は使わず、国中の魔物討伐は、すべて辺境伯に頼りきっている。私は殿下の執務をしていたからわかる、魔物討伐なのに医療班もつけず、遠征費まで削っていた。
「前王に前辺境伯、私の父が助けられ、約束の上で成り立っているが……これは扱いがひどい。成人して、力のついたカエサルに後を任せて、表向きに私達は死んだと報告した」
「しばらく休んだら、お手伝いするわ」
いくら力を持つものでも、長年の疲労は堪える。私もお手伝いしたい。式を挙げたのは昨日だけど、ここの嫁になったのだから。私は、私の研究すべてを使いたい。
私は勢いよくソファから立ち上がり、胸を張る。
「大丈夫です! 私の魔石爆弾(グレネード)を使えば、魔物なんてイチコロです!」
一瞬、キョトンとした彼の両親とカエサル様は「ふっ」「フフ」「ハハッ」と笑った。
――あ、いつもの調子でやってしまったわ。
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