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13
「ですが、カエサル様との結婚は……」
白い結婚だと言葉が続かなかった。
その理由は、昨夜、私達は初夜を済ませている。
「ローリスさんのその困った表情。まさかカエサル、あなたは気持ちばかりはやり、ローリスさんに気持ちを伝えていないの?」
カエサル様は頷き。
「そうだよ。陛下に頼み、ローリスと結婚までこぎつけたのに、あのバカ王子が今更ローリスの魅力に気付き「ローリスを城へ呼び寄せろ」と言い出した」
「え?」
「その理由もわかっている。新たな婚約者となったローリスの妹、ルルア嬢は無理、無理だと文句ばかり言い、王妃教育が始められていない」
殿下と私が婚約を破棄してから2ヶ月が経つのに、まだ王妃教育を始めていない?
ルルアは好きで、ミサロ殿下の婚約者なった。まだ納得していない貴族を認めさせるためには、それ相当の努力をしなくてはならないのに。
惚れた、腫れただけの気持ちだけでは王妃は務まらない。
「ローリスも驚く話だよね。話しは、それだけじゃないんだ……辺境伯となった僕を、ルルア嬢は王城へ呼べとも言い出した……」
この話に、黙って話を聞いていたお義父様が、ため息をついた。
「陛下は嫌味なタヌキだったが頭は切れた、王妃もだ。だが、頭の悪い王子に出来の悪い娘がついたな。これは、これは大変な話。いつになるかわからないが、国王がミサロ殿下に譲渡されたとき、この国は一気に崩れ落ちる」
「ええ、この国は次の代でお終いね」
国1番の力を持つ、元辺境伯が言うのだから、そうなのだろうと信じてしまう。そういう私もミサロ殿下の執務を手伝っていたから……いやでも分かっている。
小説の彼とは違い、私の前にいるミサロ殿下は怠慢だ。難しい仕事ばかり私に任せて、自分はハンコを押すだけ押して、あとは呑気にお茶をしていた。
ミサロ殿下に婚約破棄されるまで、執務をしていた私の仕事がすべて彼にまわり、手が回らなくなったのだろう。
「ローリスの婚約者は僕だ。バカ王子の戯言など聞くかと、屋敷に着いたすぐ結婚式を挙げた……夜、その説明をしようとしたが、可愛いローリスを見たら我慢できなかった」
「あらあら、まあまあ、ウフフ。あなたの若い時にそっくり」
「アーシャも身をもって知っているだろう。男は時に我慢がきかない」
まあ、そうね。と可愛く笑っていたお義母様は。
ウチの大事なローリスさんと、カエサルをあんなバカばっかりな王家になって行かせないわ。と、お義母様はニッコリ笑った。
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