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 王都近くの街で一泊した私たちは、翌朝身なり整え、王都へ向けて出発した。いつもの動きやすい格好ではなく、ドレス姿に緊張した。  カエサル様もいつもの軽装を脱ぎ、髪を整え、黒のジュストコール身につけている。素敵な人はどんな服を着ても素敵なのだと、あらためて思う。 (普段の格好の方が好きだけど、この姿も中々ね)  彼を見すぎていたのか、カエサル様の頬が少し赤い。そのカエサル様が「ハァー」と大きなため息をついた。 「嫌だ。僕の嫁を、誰にも見せたくない」 「カエサル?」 「今日のローリスも綺麗だ。僕の色に染まったローリス、まさに天使……この姿をバカに見せるのかと思うと、気が重い」  お互いの色を身につけた正装。ミサロ王太子殿下の婚約者のときには彼が嫌がり、叶わなかった。 「私、カエサルの色に染まって嬉しい」  少し瞳を大きくしたカエサル様に手を取られ、彼の膝の上に座り、ポフっと胸に顔を埋めた。はじめは驚いたのだけど、こうすると落ち着くみたい。 「ローリス可愛い、すごく可愛い……クソッ、見せたくない」 「私も同じ想いです。だから、今日の話し合いで終わりにしましょう」 「あぁ、終わりにしたいね」  馬車は王都の門をくぐり、街の中を進む。  古き良きを、大切にしていた王都の街に、魔導具が溢れていた。 (あの街灯は魔石街灯? それに魔石横断歩道? ……銭湯? 公衆トイレ?)  王都が魔導具で溢れている?  魔導具に使われる魔石は何処から手に入れたの?  国の魔物討伐の全てを管轄する、辺境伯は魔物から取れる魔石を魔法がかかる魔石箱に保管している。  この魔物から取れる魔石は、鉱山で採れる魔石とは違い、どの魔石にも魔素が含まれている。この国、ドルタラスでは魔素の浄化が出来ないため、全て隣国、魔法大国カーツオの冒険者ギルドに卸している。  私も鉱山で採れた魔石の数は把握しているし、世に出回っている魔石はないはず。 (それに、あの街頭のデザイン……私が子供の頃に描いたものに似ているわ)  ここが、小説の世界に転生したと気付いたとき、悲しかった。  元の場所に帰りたくて、忘れたくなくて、描いたノートの存在を忘れていた。  ――確か、公爵家で使っていた鍵付きの、机の引き出しにしまったはず。まさか、妹が私の部屋からそのノートを見つけた? だけどノートの絵は子供の拙い絵、それをここまで完璧に再現するなんて…… 「ローリス、僕達が学園に通っていた頃より、王都の雰囲気がかなり変わったね」 「ええ……」  カエサル様も気付き、馬車の窓から王都の街並みを見ている。 「僕達を城に呼んだ理由は、僕達が考えていた事と違うようだね。気を付けないと、何かおかしな事に巻き込まれそうだ」  これはカエサル様の言う通り、厄介なことに巻き込まれかも。
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