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 私達が乗った馬車は王都の街の中を通り、王門の前で止まった。前を行くキャロルが門番に王家から送られた手紙を見せ、王門が開いた。  ――行事、舞踏会以外で、ここには戻ってこないと思っていたのに。  小さく吐いた息に気付いたのか、カエサル様の抱きしめる腕が強くなった。「通ってよし!」門番の声にキャロルが先に馬で門をくぐり、馬車乗る私達、後方を騎士が門を通り、城の中に入っていく。   「ローリス。ここから先、気を引き締めよう」 「わかったわ」  カエサル様が膝の上に座る私を見上げた、それに答えるように私は頷いた。    先ほどの手紙で私達の訪れを知ったのか、ミサロ王太子殿下の側近とメイドが1人現れた。側近は私をミサロ王太子殿下の所に案内するといい、メイドはカエサル様を妹、ルルアのところにと言った。  カエサル様は首を振り。 「別々は困る。僕達夫婦は2人に呼ばれてきた。いくら王太子殿下とは言え、妻と2人きりになるのは遠慮してほしい」 「私もですわ。夫と妹が2人きりで会うのは嫌です」  と伝えた。  私達に拒否をされ、慌てた側近とメイドは「しばらくお待ちください」「確認してきます」と言い残し去っていった。2人が去るとカエサル様はビシッとした表情を崩して、私の手を取った。 「ああ、学園の頃を思い出す。厳しい物言いをする、ローリスも素敵だ」 「……ありがとう。カエサルも素敵よ」  カエサル様に厳しい物言いと言われて、ドキッとした。  後にも先にも一度だけ妹に「婚約者がいる方に言い寄ってはなりません! ルルア、あなたのせいで、泣いている令嬢がいらっしゃるのですよ」と注意したことがある。  ――まぁそのあと妹は「お姉様が私をいじめる」って、ミサロ殿下に泣きついたのだけど。それでも、言わないといけないことだった。他の令嬢もだけど……なにより、友達のカナリアが悲しんでいたのだもの。 「僕は近くに居たがなにもせず、傍観しているだけだったから、そのローリスの言葉は響いたよ」  手の甲に、チュチュとキスを落とす。 「んっ、カエサル……男性のあなたが言うとの、女性で、姉の私が言うのでは効き目が違いますわ。あ、あの、カエサル? それ以上は……」 「それ以上は、なに?」  カエサルは困る私を見て、目を細めた。 「もう、わかっているくせに! わかりましたわ、カエサル。宿屋に戻ったら仕返しします」  と言い、手の甲にキスをするのをやめない、カエサルを睨んだ。しかし、カエサルはフッと笑い。 「可愛い。その言葉で、いまから頑張れる。ローリス、今夜、楽しみにしているよ」  ほんのり赤く染まる頬に、素早くキスをした。 「ほぉ、うらやましい。君達も仲が良いみたいだね」  頬へのキスもだが、後方からの声に身が引き締まった。それはカエサル様も同じのようだ。
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