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 知った声に振り向けばそこに、この国の陛下が騎士と側近も付けず、ラフな服装でいた。  なぜ? 私達が来たことがわかったのだろう。 (私達が来ることを、ミサロ王太子殿下が伝えたのかしら?) 「息子には聞いていない。偶然、執務室の窓から辺境伯の馬車が見えて……息子が君達を呼び寄せたんじゃないかと思い、来てみた」 「そうだったんですか」  カエサルは胸に手を当て、私は慌ててカーテシーをした。いま陛下は私の表情を見て、考えていることを当てた。王妃様もさることながら、やはり国の王は格段と違う。心を落ち着けて慎重に話さないと、色々バレてしまいそうだ。 (私、王妃教育を思い出すのよ) 「遠い所をご苦労だったね。まあ、ここまで来たんだ……ウチの愚息の話を聞いてやってくれ、何を考えているのかわからんのだよ。もし、危ない道に進もうとしているなら、止めて欲しい」  陛下は王太子殿下を愚息と言い、「頼む」と手をあげ迎えに来た騎士と共に去っていった。王太子殿下を止めるなら、陛下の言葉が、彼には1番効くと思う。  ただ陛下に認められたくて、足掻いていたのだもの。 「フウッ。陛下は何をやっているかは知っているが、止めるのが面倒なのかな? それとも彼女の話にばかり耳を傾け、聞く耳を持たないのか」  カエサル様がボソッと呟く。彼女とは妹のことだろう、妹はすぐ人の心を掴むのがうまい。コロコロ変わる表情と見た目、婚約者がいようが妹と関わると、人が変わる。  例えて言うなら「あんなに温厚だった人がどうして?」妹に熱をあげて、婚約者を蔑ろにする。  いまは王太子殿下の婚約者になり、落ち着いたはず。……そうだ学園の頃、1番側にいたカエサル様は妹のことを、どう思っていたのかしら?  (いまは、私のことを好きなのはわかるけど) 「ねぇ、カエサルは妹と一緒にいて何か気付いた?」 「え、僕? 僕は、僕の野望があって側にはいたけど、彼女の事をそんなに見ていなかったから、わからない。言い寄ってくる、男性が多いとは思っていたね」 「そんだけ?」  カエサル様の野望って何? 「野望を聞きたい? 僕の野望は、ローリスとお近づきになりたいとか。話したい。好きなものを知りたい。どんな小さな事でも知りたかった……そうこうしているうちに、あの子と王太子殿下を知り合わせてしまったのだけどね」  私のことを知りたいから?   そんな可愛い野望を持って、妹といたの? 「驚いた? ……ローリス、この話は帰ってからしようか」 「えぇ、そうですね」  王太子殿下の側近と、妹のメイドが戻ってきた。
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