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「王太子殿下、あなたの婚約者にさせればいいのでは? 本来、夫婦となるものが手伝うはずです」 「俺もそうしたいのだが……ルルア嬢の王妃教育が終わらないし、本人が無理だと、やりたくないと言う」 「ミサロ、私はやりたくないとは言っていませんわ。王妃教育が大変で無理だと言っています。私達は姉妹なのだから、出来るお姉様にお任せすればいいです」  ――理不尽。  本当の王妃教育は何年。……いいえ、子供の頃から何十年かけておこなわれる。それを一年で習得するのは、並大抵の努力をしないと無理。 (あれも嫌、これも嫌だと屋敷に呼んだ家庭教師にさえ言っていたのに、妹は無理な話し)  だけど、私達夫婦をここに呼んだ理由が、それだけだとは考えられない。 (そんな理由で、私達を城に呼んだの? ……まさか、王都で見た街灯などの魔導具のこと? 各地の魔物討伐で集まり、辺境伯で保管され、隣国に卸している魔石のこと?)  魔物の肉は研究の末、魔素のところを上手く取り除けば食べられるとわかった。だが、魔物から採れた魔石の魔素は、しっかり浄化しないと使用できない。  ――彼らはそのことを知ったうえで、使用しているのかしら?    隣に座る、カエサル様が息を吸い。 「王太子殿下、無理なものは無理だ、他をあたってください。そうだ、宰相のキーブロ公爵に頼んでは? 才のある公爵ならば、きっと僕達より良い案を下さる」  そう提案したが、ミサロ王太子殿下は渋い顔をした。もしかすると陛下、王妃からも言われたのだろうか。 「カエサル卿、宰相キーブロには頼めない……最近知ったのだが、奴の家に英才教育を受けた俺の弟がいる」 「「弟⁉︎」」  これは初めて聞く話だ。  いや、考えればわかる。  次の陛下はミサロ王太子殿下が継ぐ、子供がいない宰相様の所で英才教育を受けさせ、宰相として王太子殿下の下で働かせる。  そうすれば兄弟での争いがなくなると、陛下は考えていたが。ミサロ王太子殿下の余りの出来の悪さと。婚約者、妹の王妃教育が思いのほか進まない。  苦肉の策で、宰相のところで英才教育を受けた、弟王子を次の陛下にしようと考えている。じゃないと、今のいまになって弟がいるなんて、殿下に伝えない。 (もし伝えるのなら、彼が国王陛下となったときでもいいもの) 「いや待ってください、王太子殿下! そんな、王家の機密情報を僕たちに伝えていいのですか? この事を陛下は、王妃は、知っているのですか?」  焦るカエサル様に、ミサロ王太子殿下は首を横に振る。 「父上と母上は知らない。カエサル卿、頼む。俺が陛下になれるように、ローリス嬢を貸して欲しい。どうしても俺は、ルルア嬢を王妃にしたい」 「ミサロ様、ルルア嬉しい」  この期に及んで、お花畑全開のミサロ王太子殿下と妹には呆れるしかなかった。
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