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21
――あなた達は何を言っているの? と言いたくなるほどお花畑。いつもこんなのだと、陛下が国を任せられないと、思うのもわかる。
自分達のことしか考えていないし。2人でキャッキャしだしたのを見て、呆れてしまった。それはカエサル様も同じのようだ。
呆れてしまったみたいで。
「次の国王を、弟に任せた方がいいのでは?」
と、ため息混じり話だ。
それにすぐ噛み付く、ミサロ王太子殿下。
「はぁ? 何を言い出す。俺がならなくてどうする。俺は信頼もあって、頼りになる」
(どこが? と聞きたくなるけど、私まで話しだすと話が長くなりそうなので、出そうになった言葉を紅茶といっしょに飲み込んだ)
「仕事が出来ず、僕の妻に執務を頼もうとしている男が、どう頼りになると言う」
「ぐっ。……だが俺には秘策がある。王都に作られた魔導具を見たかぁ? 俺はすべてリリアが発明したものだ!」
ミサロ王太子殿下の話に、妹を見ればニヤリと笑い一冊のノートを取り出した。そのノートは私が子供の時の描いたもの。今まで忘れていたけど、鍵付きの机の引き出しにしまっておいたのに。
「ルルア、それどこで見つけたの?」
「え? ローリスお姉様の部屋よ。お母様から部屋が空いたって聞いて、荷物を運び出すとき偶然見つけたわ」
「それを描いたのは私よ、返しなさい!」
子供の頃に、元いた世界を思い描いたノート。王妃教育がはじまり、厳しい毎日を送っていて忘れてしまっていたけど、紛れもない私が描いた昔の記憶。
「ダメよ、私が見つけたの。見つけた私のものだわ」
「ローリス、ここに描いてある物は見たことがなく、どれも素晴らしい魔導具。これらを作れば人々は豊かになり、俺の株は上がる」
街灯、横断歩道、この世界にないものばかり……最後に食べていた夕飯、あとで食べようと、いれておいた冷蔵庫のプリン。ベランダに干したままの洗濯物と洗濯機、読みかけの小説。テーブルの上のスマホと、テレビのリモコン。
仕事から久しぶりに帰ってきた家で、私が最後に見た風景を思い出して描いた。あとは出勤途中に見える風景ばかり。
「だが、ミサロ王太子殿下。それらの魔導具を作るに、魔石が必要だと知っているのか?」
「ああ、先月に開催された舞踏会で知り合った、隣国チャハの王太子にこの話をしたところ、魔導具の開発に協力してくれる話になった。いま王都の中に魔石街灯、魔石横断歩道などを共に開発中だ」
「そうなの、チャハの王太子は私達の話を、真剣に聞いてくれて、無償で魔石も大量にくれたの」
「え?」
隣国チャハと聞いて、カエサル様は眉をひそめた。あの国は大昔、黒魔術で古のドラゴンを飛び出し、他の国を滅ぼそうとした。
黒魔術によって呼び出されたドラゴンは空を飛び、火を吹き、いくつもの国を襲う。人々はドラゴンの巨悪な力に怯え、戦うことも、逃げることも出来ず、人々は空に向かって祈った。
その中いた少女の祈りが、いにしえのドラゴンの術を解き、ドラゴンを消したと王妃教育で習った。いまもなお黒魔術が盛んな、チャハ国は危険な国とされ、どこの国も取引はしないと言われている。
その国が、魔導具の開発?
無償で、魔石をくれた?
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