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「名前なんてどうでもいいじゃないですかぁ! 魔物、魔物が襲ってきます!」  見合う私達に側近が声を上げた。 「わかっていますわ!」 「わかっております!」  スカーロンの森の中に、爆発の音と剣の音が響く。  私達のところに護衛として寄越された、辺境伯の側近、タロさんも腕が立つらしく、後方でキャロルと剣を握っている。  乗ってきた馬車は料金を払い帰して、荷物を入れたリュックを背負い、徒歩で森の中を歩いている。  背負っているリュックの中身は、野営が出来るセットと私とキャロルの服、日用品が入っている。 (私よりも重い荷物を平然と背負い、剣を振るキャロルは頼りになるわ)  ――本当なら。アイテムボックスを覚えたかったのだけど。ここは、なにせ魔法がない国。  魔法に関しての書物が少なく、隣国に買いに行ったり、取り寄せたりしたが。魔法の書物は魔導具を打っても、貴重で値段が高く、必要最低限の魔法しか覚えられなかった。  ミサロ殿下の婚約者の頃は、王城で王妃教育と執務があったから、なおさら自由に出来る時間が少なかった。 (王妃教育はしなくていいし、いまは鉱山と慰謝料があるから、魔法の書物を買って覚えられるわ!)  私の後ろで剣を振る側近のタロさんが、何匹目かの魔物を倒したあと、泣きながら私達に伝えた。 「ローリス様とメイドさんが強いことはわかりました。広い森での野営は危険ですのて、さっきの場所へと戻りましょう。旦那様に知られたら、マジギレされた主人に怒られます! 殺されます!」 「野営に離れているから大丈夫よ。それに、この事は私がカエサル様に話すから、タロさんは心配しないで」 「私が、お嬢様直伝の美味しい料理を作ります!」  魔物を見つけては魔石爆弾(グレネード)を投げつけた。スカーロン森に「ウギャア」「グオン」魔物達の悲鳴が響く。  ――でも……この魔物の量は.前より増えているわ。スカーロン森の何処かで瘴気が発生したのかしら? なら浄化魔法が使える妹に連絡すれば、浄化してくれるはず。  学園のときは、その力を見ることはなかった。  小説だと妹ルルアには癒しの力があり、みんなに聖女だと呼ばれていた。私は悪女だったかしら?  初めミサロ殿下は、その力を確かめるためにルルアへ近付いたが、あまりの妹の可愛さにコロッと落ちた。 (見た目は可愛いけど性格は悪いから、同姓からは嫌われて、異性からは好かれていたわね) 「お嬢様、考え事は後で!」 「ええ、わかっているわ!」  襲ってきた魔物に、魔石爆弾(グレネード)を投げつけた。この魔石爆弾(グレネード)は魔物の体に当たると、爆発して魔物に致命的な傷を負わす。爆弾で弱った魔物を剣士、魔法使いらが倒して終わり。 (この石に私の魔力をもっとこめれば、威力が上がるのだけど。それをしてしまうと、人を巻き込んでしまうから出来ないのよね。何かしらの魔法で足を止めるか、魔物が何匹もはいる巨大な落とし穴を作って、落とせばいいのだけど)  ――そんなこと、某ゲームじゃあるまいし無理な話よね。まだやったことがないけど、魔石爆弾(グレネード)にありったけの魔力を込めて、地面にぶつけてみる?
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