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(なんなのこの人は?)  少しの魔力を感じ目が覚めたと同時に、カエサル様がテントに入ってきた。そして数分もの間、私の寝顔を見つめている。  これは目を開けていいものか、悩む。 「……可愛い」  耳を疑う言葉。  ――あなたは妹が好きではなかったの?  パチッと目を開けた。瞳に映る灯りの魔法と、銀色に光る髪、青い瞳、私を見つめていたカエサル様と瞳がかち合った。  だが彼は驚かず、私を見て微笑んだ。 「ごめん、起こしてしまったようだね」 「いいえ、どのようにして結界の中へ入ってきたのですか? 中に入れば感知出来るはずなのに……」  彼に向けて、強めの言葉が出てしまう。  だって、私の魔法が破られた悔しさと、彼の美貌に見惚れた自分に腹が立ったのだ。 「ああ、素晴らしい魔法だったよ。だけど、ボクの魔力の方が高い。魔法式を変えさせてもらった」 「魔法式を変えた? さすが、辺境伯様ですわ」 「違う、カエサルだよ。ローリス嬢」  私に向けた優しい青い瞳、柔らかい声。  カエサル様の美貌で言われたら、殆どの女性は胸をときめかす。その中に私も含まれている。    ――妹を好きだったくせに、女性なら誰でもいいの? 結婚するのも、私の研究が欲しいだけのくせに。   「その瞳も……いい」 「え?」 「ここにいたら、ローリス嬢を襲ってしまう。隣のタロのところで朝まで眠るから、おやすみ、ローリス」  私の頬をひとなでして、カエサル様はテントを出てった。彼に「おやすみ」と言われても、寝ることが出来ない。 (カエサル様は妹が好きだった……)  さっきから、頭の中に同じ言葉が繰り返される。誰が見てもお似合いの2人だったから、妹が婚約者だったミサロ殿下を選ぶとは思わなかったし、さっきの彼の言葉は私に向けられた言葉じゃない。 (わかった。私の研究が欲しいから、彼は演技をしているのよ)  私に魅力がないから、ミサロ殿下を引き止められず妹を奪われた、私は彼に嫌われているはずだもの。
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